2024年の注目テーマである「宇宙開発関連株」の中から、今期経常を赤字縮小に上方修正した株式会社ispaceの決算資料を改めてまとめてみました。
この要約は、会社の決算報告書を元に作成されていますが、その正確性や完全性について保証するものではありません。投資や意思決定を行う際は、独自の調査と専門家の助言を受けることをお勧めします。
ざっくりとわかる!企業サマリー
株式会社ispaceは、月に経済圏を築くことを目指す宇宙企業です。
9348 (株)ispace あいすぺーす [ サービス業 ]
【URL】https://www.ispace-inc.com/jpn/
【決算】3月
【設立】2013.5
【上場】2023.4(東証グロース)
【代表者】袴田 武史
【資本金】93,022千円
【特色】宇宙ベンチャー。月面へ顧客から預かる荷物を運ぶ事業や、月面からデータを提供する事業が柱
「Moon Valley 2040」というコンセプトを掲げ、月の資源を活用し、宇宙事業を推進しています。将来的には月での居住や経済活動を実現し、地球と月を結ぶ新たなエコシステムを構築することを目指しています。
資料サマリー
ispaceは資金調達や業績管理を通じて事業の継続性を確保しながら複数のミッションを進行中で、現在公表しているミッションスケジュールは以下です。
- 2022年…M1
- 2023年
- 2024年…M2
- 2025年
- 2026年…M3
- 2027年…M6
2022年12月11日、同社は営利企業としてはじめて月着陸船の打ち上げを成功させました(M1)。しかし月面着陸の最終降下フェーズまで到達したものの、ソフトウェアの課題により着陸には至りませんでした。改善策をMission 2に反映させることで技術成熟化を図っています。
また会計面では、原価回収基準に基づき売上を認識し、ミッション完了時に粗利を計上する仕組みを採用しています。資金調達により複数のミッションを同時進行し、財務基盤を強化。2030年代には月に1,000人が住むエコシステムを構築することを目指しています。
さらに、月面産業の発展に貢献するためにミッションの準備を進めており、新たな契約や取り組みを加速しています。
企業の業績概要
株式会社ispaceの業績は、修正後の通期業績予想では以下を見込んでいます。
- 売上高2,370百万円
- 営業損失5,906百万円
- 経常損失7,144百万円
- 当期純損失3,348百万円
売上高の下方修正がありますが、これは会計処理の関係から売上の計上時期が翌期以降に繰延されたためであり、ミッションの総契約金額に変化はなく、事業進捗に特段の影響はないとされています。
ミッションごとの進捗分析
先ほども説明した通り、現在公表しているミッションスケジュールは次のとおりです。
- 2022年…M1
- 2023年
- 2024年…M2
- 2025年
- 2026年…M3
- 2027年…M6
以下は各ミッション(M)の進捗状況です。
【M2】…最速2024年冬の打上げを目指し、ランダー※1の組み立てが順調に進行中
【M3】…PDR※2とCDR※3の間に位置するIDR(中間設計審査)が行われ、来年度予定のCDRに向けランダーの開発が順調に進行中。
【M6】…2027年の打上げを目指し、SBIRの交付決定を受け、Series 3 Landerの開発が本格的にスタート・2024年のPDR及び2026年のCDRの開発マイルストーンが想定されてる
補足
※1:ランダーとは
宇宙船や宇宙探査機が他の天体の表面に着陸するための機器や装置のことです。月や火星などの天体に到達し、安全に着陸するために使用されます。
ランダーは、着陸後に科学的な観測や調査を行ったり、ペイロード(荷物)を運ぶ役割を果たしたりします。ispaceも自社開発のランダーを使用して、月面にペイロードを輸送するサービスを提供しています。
※2:PDR(Preliminary Design Review)とは
設計段階の初期に行われる審査で、設計が要求仕様を満たしているかどうかを確認するものです。設計の基本的なアプローチや機能が適切かどうかを評価します。
※3:CDR(Critical Design Review)とは
設計段階の最終段階に行われる審査で、設計が実装可能であり、要求仕様を満たしているかどうかを確認します。設計の詳細な部分や実装計画が適切かどうかを評価します。
財務状況の分析
続いて財務状況です。
1.2024年3月期Q3の財務ハイライト
2024年3月期Q3の売上高予想が修正され、約23.7億円に減少。主な要因は、ミッション3の開発における原価発生の遅れによる影響です。
2.資金調達
三井住友信託銀行から20億円、朝日信用金庫から5億円の融資契約を締結し、今期累計の調達額は約140億円に達しました。
3.業績予想
通期業績予想では、以下を見込んでいます。
- 売上高2,370百万円
- 営業損失5,906百万円
- 経常損失7,144百万円
- 当期純損失3,348百万円
今後の展望
株式会社ispaceの今後の展望は以下の通りです。
1.事業展開
ispaceは、「Moon Valley 2040」というコンセプトに基づき、2040年以降には月に約1,000人が住み、働き、多様な企業が経済を生み出す世界を目指しています。
これに向けて、M2、M3、M6などのミッションを通じて宇宙事業を推進していく予定です。
2.資金調達
今後も資金調達を継続し、強固な財務基盤を維持しながら、複数のミッションを同時進行させることで事業の継続性を確保する予定です。
3.業績見通し
修正後の通期業績予想では、売上高の下方修正があるものの、ミッションの総契約金額に変化はなく、事業進捗に特段の影響はないとされています。
今後も事業を着実に推進し、成長を目指す方針です。以上が株式会社ispaceの今後の展望に関する要点です。
結論
一部のプロジェクトの遅れや費用超過などが業績に一時的な影響を与えているものの、宇宙産業全体の成長が期待されます。
今後の展望も明るく、宇宙開発会社は宇宙産業の発展に向けて重要な役割を果たすことが期待されるでしょう。
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参考文献・引用元
IR資料 2024年3月期Q3 決算説明会書き起こし |株式会社ispace